移植・再生医療

iPS細胞のヒトへの臨床応用が始まりました

2014年9月12日午後、理化学研究所の高橋政代先生が世界で初めてiPS細胞を用いたヒトへの臨床治療を開始されました。
山中伸弥先生がiPS細胞を2007年に作ってから、7年後にこのようなスピードで臨床応用が行われたことに大変感銘を受けます。
この臨床応用の実現は、様々な困難を乗り越えた結果であり、再生医療の専門医として、そして同じ眼科医の仲間として、
心から尊敬とエールを送りたいと思います。

今回移植された網膜色素上皮細胞という細胞は、もともとその性質上、非常に特徴のある細胞です。
この細胞は、分裂をしないこと、眼内に留まること、色素をもっているため、検出しやすいことなどから
ガン化の可能性も低く、安全性が高い細胞であるといえます。

他の臓器でのiPS細胞を用いた臨床応用への期待も高まりますが、今回の実験で使われた網膜色素上皮細胞細胞は体の中でも特徴的なものであり
すぐに実施に至ることは難しいかもしれません。一方、同じく眼内の角膜内皮細胞は網膜色素上皮細胞と同じように
分裂をせず、細胞数も少ないことから私たちも力を入れて研究中です。

慶應義塾大学医学部眼科学教室では、最近、ヒトiPS細胞から角膜内皮細胞の作成に成功しました。
近い将来には、高橋先生に続き、臨床応用に取り組みたいと考えています。
これらの研究によって安全性と効果が確認できれば、iPS細胞を用いた再生医療の実現がより身近なものになり、
日本が、この分野で最先端を走り、患者様の健康に更に貢献できることを期待しています。
私もより多くの患者様に光を届けられるよう、さらに研究を推進してまいります。

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